義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 一応着ていた制服を、しっかり着られているか鏡で確かめた。渉と同じ制服の、女子制服だ。
 ワインレッドのチェック柄のスカート。白いブラウスに赤いリボン。上は紺のジャケット。
 三年生は渉の着ているように、グリーンが基調なのだけど、一年生は赤系だ。どちらもとてもかわいいけれど。
 朝ご飯のときは着ていなかったジャケットもちゃんと着て、ボタンも全部留めた。
 だらしのない着方などしない。どちらかというと優等生であるし……『お兄ちゃん』の品位を落とすようなことはしたくなかった。
 顔も洗ったし、髪もとかした。歯みがきもした。用意は完璧。
 さらさらの茶色の髪は結ばない。学校で体育の時間だけゴムで結ぶことにしている。
 以前通っていた学校では結ばなくてはいけない決まりになっていたけれど、今の慶隼学園ではそんなことはなかった。
 なので、せっかくだからとおろすことにしていた。なんだか結ぶよりも大人っぽく見える気がしたので。おまけに制服がオシャレなので、やぼったい髪型は似合わない。
 うん、今日もかわいくできた。
 梓は満足して、鏡の前でにこっと笑った。
 お腹もいっぱいになって、緊張もほどけていた。
「準備できたか。行くぞ」
 渉から声がかかっても、「はぁい」と自然に返事ができる。そのまま、昨日しっかり支度をしておいた通学バッグを持って玄関へ。
 渉はすでに靴を履いて待っていてくれた。通学バッグと、ほかには部活に使うスポーツバッグも持っている。
「いってきまーす」
 家に残っているひとはいないけれど、一応きちんと挨拶をする。
 渉が鍵をかけてくれた。その鍵は通学バッグの決まったポケットに入れられるのだ。
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