義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
転校の思い出
 七月も終盤になった。夏休みのはじまりだ。
 夏休み前にはテストがあったけれど。やはり二週間の渉の家庭教師をしてもらって、梓はなかなかの成績を取ることができた。
 国語などの文系はいつもどおり、八十点前後の、平均より少し上を取ることができたし、数学などの理系も、なんと七十点ほどを取ることができた。
 返ってきたテストを見て、梓は二度見してしまったものだ。
 予想よりずいぶんいい点数だったために。
 確かに手ごたえはあった。渉に最後に見てもらったときも「これなら落ちついてやれば大丈夫さ」と言ってもらえた。
 でも実際に数字で見れば、感動してしまった。こんないい点。
 帰ってテストを見たお母さんにも「頑張ったわね」と褒めてもらえた。
 今日はお母さんが先にパートから帰ってきた。お父さんは夕方にもなっていないので、早い日だろうとまだ帰ってこない時間だし、渉は部活があるので遅くなると言っていた。
 なのでリビングのお母さんにはじめにテストを見せたのだけど、一枚ずつめくっていくうちに、お母さんの顔がどんどん明るくなっていった。梓もつられて嬉しくなってしまう。
「すごいじゃない」
 最後まで見て、にっこりと笑みを向けられた。梓は、えへへ、とやはり笑ってしまった。
「生徒会なんかやるって聞いたときは心配だったけど、ちゃんと勉強もしてるのね」
 もう一度最初から丁寧にテスト用紙を見ながらお母さんは感慨深そうに言った。
 確かに、生徒会なんて忙しいんじゃないの? と、入ったときに言われてしまったのだ。
 そのとき渉がフォローしてくれたけど。
『確かに行事があるときとかは忙しいよ』
『けど、常に用事があるって活動じゃないし……一年生はもっと出番が少ないんだ』
『勉強や遊びの時間が減るんじゃないかって心配になるのは、学年が上がって本格的にやろうと思ったときでじゅうぶんだよ』
 とつとつと言ってくれたし、全部本当のことだった。それほど忙しくないのも確かだったし、なにもないときには一週間に一度くらいしか集まらないのだ。
 でもお母さんはやはり心配だったのだろう。
「渉も勉強を見てくれるから助かるわ。あの子も忙しいのに」
 テスト用紙を見終わって、お母さんは用紙を重ねてテーブルに置いた。「お父さんにも見せなさいね」と言ったあと、テーブルに置いてあったグラスからお茶を飲んだ。
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