義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 梓ら、後輩たちは単純作業が多かった。業務のメモを清書したり、連絡をもらったことがらをまとめたり、あるいは電話の取次ぎをしたり……そういうことばかりだったので、生徒会室から外に出る機会もあまりない。
 だが渉は違った。むしろ生徒会室で作業をしているほうが少なかった。
 直接、実行委員会の活動する部屋へ赴いて、なにか、相談などがあるのだろう。そういう作業をしているようだ。
 当たり前のように、気を張るし大変だろう。
 なのに渉ときたら生徒会室で過ごせる時間も、後輩たちの面倒をよく見てくれるのである。
「わからないところはない?」
 ある日は梓たちがデスクについて作業をしているところを、ゆっくり回ってくれた。
 梓は今日、また計算をしていた。実行委員会から回ってきた予算企画。それが合っているかの確認の計算だ。
 ノートと資料を見ながら電卓を叩いて、『間違っていません』とチェックを入れていくだけだ。
 なので「大丈夫です」と答えた。渉はここでは『後輩』としてしか扱わないので、「それなら良かった」とにこっとだけして、次の机に移っていった。
 そこでは女子生徒が渉になにか聞いたようだった。梓はそちらをちらりと見て、気付く。
 夏休みの前。渉が今日は生徒会に帰ってくるのかと気にしていた二年生の子だ。
 渉と直接話ができることができて嬉しいのだろう。顔が輝いていた。
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