義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「ありがとうございました、小鳥遊先輩!」
 教えるのも終わって、二年生のその子が笑みを浮かべてお礼を言うのが見えた。渉もにこっと笑って「またわからないことがあったら聞いてくれ」と言って次の子の質問に移っていった。
 それを見ながら、梓はなんだかそわそわしてしまってたまらなかった。計算は上の空になってしまう。
 なににそわそわしているのかがわからない。
 ただ、視線の先にはずっと渉がいた。
 後輩に質問して回って……渉に話しかけられたり、なにか教えてもらったりすれば、女子後輩はみんな嬉しそうな様子を見せた。
 学園の王子様が自分だけを見てくれているのだ。嬉しいに決まっている。
 ただ、梓は自分も一応同じように話しかけてもらったというのに、どこか、そう、不満ともいえるだろう感情を感じてしまっていた。
 ああいうふうにしてくれるのは、私だけじゃないんだ。
 当たり前のことを思ってしまい、もっとよくわからなくなった。
< 69 / 128 >

この作品をシェア

pagetop