義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「……小鳥遊さん? 具合でも悪い?」
 問われてはっとした。顔を上げると女子副会長の金糸先輩がこちらを見ていた。ぼうっとしていたからそう思われてしまったらしい。
 自分が思考に沈んで、手を動かすのが止まってしまっていたことをやっと自覚して、梓は恥ずかしくなった。仕事中なのに、こんな。
「だ、大丈夫です」
 やっと言った。実際、なんでもない。変なことを考えてしまっただけだ。
「そう? 暑いかしら。温度を下げようか?」
 それでも金糸先輩は気遣ってくれたようだ。テーブルに置いてあった空調のリモコンを手に取ろうとする。
「だ、大丈夫です!」
 動揺していたので、同じことを言ってしまった。梓の返事に金糸先輩も同じく「そう?」と言ったのだけど、そこで違う声がした。
「ちょっと休憩にしよう。みんな、集中が続いて疲れてくる頃だ」
 渉だった。
 私を気遣ってくれたのかな。仕事を頑張って疲れたのだと思われたのかもしれない。
 私の様子を見て、だ。
 その想像は嬉しかったが、情けなくもあった。
 集中を欠いてしまっていると思われたなんて。
 仕事をサボっているのと同じではないか。
 胸が痛くなってしまう。渉にそんなふうに思われたくなどない。立派な妹でいたいのに。
 ああ、でもここ、生徒会室ではただの後輩なのだ。
 後輩としても立派でいたいことに変わりはない、けれど。
 でも現状では迷惑をかけてしまったではないか。おまけにこれまでだって、言いつけられたことをこなすだけで、特に貢献などもしていない。
 私、このままでいいのかなぁ。
 このまま、と思ったものの、なにをどうするべきなのかわからないままだ。生徒会の仕事をいくら頑張りたいと思ったところで、一年生で、なんの権限もないのが自分。でしゃばってはかえって邪魔になってしまうのだろう。
 結局、一番役に立てるのは、今のように『先輩に言いつけられたことをしっかりこなす』なのである。
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