義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 それは後輩で新入り、雑用の立場である以上、仕方がないし当たり前のことなのだけど……。
 梓はせめてと「お茶、用意します」と席を立った。けれど、部屋の隅の冷蔵庫には大きなペットボトルはあったけれど、中身は底のほうに少ししか入っていなかった。
 あれ、買ってこないとかな。
 梓は冷蔵庫を閉めて振り返った。
「あの、お茶が切れたみたいです。私、買ってきます」
 金糸先輩が「あら。じゃあ、悪いけどお願いしていいかしら。購買で買えるから……領収書をもらってきてね」と言ってくれる。
「はい。じゃあ、いってきます」
 梓は棚の鍵を開けて、小さなポーチを取りだした。そこには生徒会で使えるお金が入っている。備品などを買うときはここから出して払って、代わりにもらった領収書を入れておくのである。
 それを持って出かけようとした梓だったけれど、そこへ誰かがきた。梓のすぐうしろへだ。
「持つの重いだろ。俺も行くよ」
 渉であった。先ほどのことがあるので、梓はどきりとしてしまう。
「ああ、そうね。何本か買うものね。小鳥遊くん、いいの? 誰かに頼んでも……」
 金糸先輩はそんなふうに言った。
 それはそうだろう。今日は会長がいないので、この部屋で一番上の立場なのは渉と金糸先輩なのだ。
 渉が行くまでもないのだ。後輩のほかの子におつかいしてもらえばいい。
 けれど、俺が、と言ってくれた。
 梓の心がほわっとなる。そのあとの渉の言葉で二人でのおつかいは決定した。
「いいさ。俺もちょっと外に出て気分転換がしたいし」
 じゃ、行くか。
 促されて、梓は先にドアを出た。行くか、と言われたときに、背中をぽんと叩かれたので、ちょっとどきんとしてしまったのだけど。
 その手の感触が優しくて。でもなぜかとても胸を高鳴らせてきて。
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