義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「生徒会の仕事は昼前に終わるって話をしたから……まずかったな」
声が近付いてくる。渉は緊張したようにまた小さく言った。そこでやっと梓は声を出すことができた。
渉に抱きしめられている状況なのだ、まともな言葉にはならなかったけれど。
「え、それ、は、」
「バスケ部の後輩……校舎になんの用事だよ」
ぽうっとしていた頭の中に、やっとまともな意識が戻ってくる。少しずつ、渉の言葉の意味を感じられるようになった。
つまり渉は、今近付いてきているらしいバスケ部のひとたちから隠れるために、梓を抱き込んで隠れている、らしい。
自分が抱き込まれていることを頭で理解した途端、またぐらっと揺れてしまったけれど。
こんなの、前にテレビで見た、流行りのアニメ、『シトロン・シトラス』みたいじゃない。
あの、大学生のヒロインが男の子に、隠れるために抱きしめられて……。
いや、まったく同じだよ!? こんなの!?
混乱した頭の中で梓は誰にともなく言ってしまった。
足音と声が近付いてくる。
見つかっちゃうかな。
思った梓であったが、見つかるのは大変困る、と思って熱い顔がもっと熱くなった。
こんな、妹、あ、設定としてはいとこを抱きしめている状況を見られるほうが、普通にバスケ部のひとたちに見つかるより危険じゃないの!?
またどうでもいいことが頭に浮かんでしまった。
「はー、まったく教室に忘れるとはなぁ」
「お前はヌケてるなぁ。こないだの補習のときに持ってたからだろ」
なにかわからないが、忘れ物をして教室の棟に取りに来た、ということらしい。
バスケ部の後輩だというその声が迫ってきて、梓のどきどきする心臓がもっと速くなった。渉の腕にもぎゅっと力がこもる。それは余計に梓の心臓を刺激したけれど。
「あ、そういえばさー、小鳥遊先輩」
いきなり渉の名前が出て、梓は心臓が飛び出すかと思った。きっと渉も同じだっただろう。もう一度腕に力がこもったから。
まさか、見つかっていないにしろ、察されたのでは。
けれどそれは幸い違ったらしい。
「昼前には生徒会、終わるんだって言ってたよな。午後から来るかな?」
「来るんじゃね? なに、お前またコーチしてもらうの?」
「ああ! こないだの大会のプレイがすごかったから……俺も小鳥遊先輩みたいになりてーなぁ……」
「じゃあせいぜい練習に励むんだな」
会話はそのようなもの。間近まで来た声はそのまま通過していって、梓はまだどきどきしつつも、少しずつ緊張が緩むのを感じた。
多分、気付かなかった、よね?
声と足音が少しずつ遠くなる。そしてそのうち角でも曲がったのか、ほとんど聞こえなくなった。
もう大丈夫、かな。
梓はそろそろと力を抜こうとした。
そこへ、はーっとため息が聞こえる。しかもそれは上から降ってきた。
「あー、行ったな……どうなるかと思った」
心底安心した、という声音の渉であった。
声が近付いてくる。渉は緊張したようにまた小さく言った。そこでやっと梓は声を出すことができた。
渉に抱きしめられている状況なのだ、まともな言葉にはならなかったけれど。
「え、それ、は、」
「バスケ部の後輩……校舎になんの用事だよ」
ぽうっとしていた頭の中に、やっとまともな意識が戻ってくる。少しずつ、渉の言葉の意味を感じられるようになった。
つまり渉は、今近付いてきているらしいバスケ部のひとたちから隠れるために、梓を抱き込んで隠れている、らしい。
自分が抱き込まれていることを頭で理解した途端、またぐらっと揺れてしまったけれど。
こんなの、前にテレビで見た、流行りのアニメ、『シトロン・シトラス』みたいじゃない。
あの、大学生のヒロインが男の子に、隠れるために抱きしめられて……。
いや、まったく同じだよ!? こんなの!?
混乱した頭の中で梓は誰にともなく言ってしまった。
足音と声が近付いてくる。
見つかっちゃうかな。
思った梓であったが、見つかるのは大変困る、と思って熱い顔がもっと熱くなった。
こんな、妹、あ、設定としてはいとこを抱きしめている状況を見られるほうが、普通にバスケ部のひとたちに見つかるより危険じゃないの!?
またどうでもいいことが頭に浮かんでしまった。
「はー、まったく教室に忘れるとはなぁ」
「お前はヌケてるなぁ。こないだの補習のときに持ってたからだろ」
なにかわからないが、忘れ物をして教室の棟に取りに来た、ということらしい。
バスケ部の後輩だというその声が迫ってきて、梓のどきどきする心臓がもっと速くなった。渉の腕にもぎゅっと力がこもる。それは余計に梓の心臓を刺激したけれど。
「あ、そういえばさー、小鳥遊先輩」
いきなり渉の名前が出て、梓は心臓が飛び出すかと思った。きっと渉も同じだっただろう。もう一度腕に力がこもったから。
まさか、見つかっていないにしろ、察されたのでは。
けれどそれは幸い違ったらしい。
「昼前には生徒会、終わるんだって言ってたよな。午後から来るかな?」
「来るんじゃね? なに、お前またコーチしてもらうの?」
「ああ! こないだの大会のプレイがすごかったから……俺も小鳥遊先輩みたいになりてーなぁ……」
「じゃあせいぜい練習に励むんだな」
会話はそのようなもの。間近まで来た声はそのまま通過していって、梓はまだどきどきしつつも、少しずつ緊張が緩むのを感じた。
多分、気付かなかった、よね?
声と足音が少しずつ遠くなる。そしてそのうち角でも曲がったのか、ほとんど聞こえなくなった。
もう大丈夫、かな。
梓はそろそろと力を抜こうとした。
そこへ、はーっとため息が聞こえる。しかもそれは上から降ってきた。
「あー、行ったな……どうなるかと思った」
心底安心した、という声音の渉であった。