義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます～たくさんの好きをあなたに～

　渉が視線を逸らしたので。
　どこか気まずそうであった。今度は梓のほうが不思議そうな目をしただろう。
「……もう少し、生徒会のほうにいたかったから」
　渉の声も気まずそうだった。おまけにそれに続いた言葉に梓は仰天した。
「お前のことも気になったし」
　気になった、とは。
　いったんだいぶ落ち着いていたというのに、また火がつきそうに熱くなってしまう。抱きしめられた衝撃に比べれば少なかったけれど、それもじゅうぶんな熱を持っていた。
　それは妹だから？
　それとも後輩だから？
　でも、そうじゃなくて、ほかになにかとか？
「あー、そろそろ行こうか。またバスケ部に見つかって連行されたら困るからな」
　渉はちょっと髪をくしゃっとやった。それは気まずいとか照れるとか……そういうときにするものだと知っていたので、梓の心臓がまたひとつ、とくりと跳ねてしまう。
「……うん」
　この一連の出来事は夢だったのだろうか。あまりに大ごとで、そうまで思った。けれど、渉の次の言葉に、その心臓はずきっと痛む。
「兄とはいえ、悪かった」
　兄とはいえ？
　それは妹だからとしか思われていなかったのだろうか。
　わからなくなりそうだ。色々と。
　色々、というのは渉の行動もそうだし、自分がどう感じたかもそうだし、自分がどうしてこんなにどきどきしてしまうのか、とか、そういうことも。
　この状況で落ちついて考えろというほうが無理だが。
　けれど、一番気になること。それははっきりしていた。
　『お兄ちゃん』は、私のことをどう思ってくれているのかな。
　妹だから。
　後輩だから。
　それとも。
　さっきも浮かんだそのこと。
　思ってまた顔が熱くなってしまいそうで、そのあと購買に行って、お茶を買うまで。梓はほとんどなにもしゃべれなかった。