義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 それでお昼前に帰宅できてしまった。今日は家にいたお母さんにもやはり心配されてしまった。
「熱中症かしら」
 この暑さの中、娘が『体調が良くないから帰ってきた』と言えばその連想は当然だろう。生徒会の仕事を途中で抜けさせてもらって帰ってきたのは本当であるし、渉が同じ生徒会にいるのだ。
 「早く終わったの」とか下手な言い訳をしたら、あとから話が噛み合わなくなって、面倒なことになる可能性もあった。なので正直に言ったのだ。
「ううん、保健の先生にちょっと診てもらったけど違うって。……疲れからの貧血でしょうって」
 ここだけはお母さんに申し訳ないけれど、嘘をついた。保健の先生うんぬんは確かめようがないからである。
 余計な心配をかけたくないのだ。本当に体調は悪くないので許してほしい。
 お母さんは「それなら……」と、熱中症の疑いは引っ込めてくれた。それでもやはり心配そうな顔。
「そうねぇ、最近、生徒会でひんぱんに出掛けてたからそれかしらね。明日で終わりよね?」
「うん。明日まで」
 どうやらこの方向で収まりそうだ。梓はほっとしながら頷いた。
「じゃあそれが終わったらしばらくゆっくりなさい。合同合宿も無理をしないこと。お盆にはおじいちゃんのところへ行くけど、体調が悪かったら予定を変えるから早めに言うのよ」
 そんなわけで、この件は平和に片付いて、午後からはおとなしく過ごしなさい、と部屋に入れられてしまった。お母さんにそうされなくても、どこかに遊びに行こうとは思わなかったけれど。
 午後は夏休みの宿題をしたり、あるいは休憩してスマホゲームをしたりして過ごした。
 特に泣くことも落ち込むこともなかった。楓に話したことで、苦しい感情ももうすべて吐き出してすっきりしてしまったのだ。
 告白や好きなひと、のことを考えると心は痛んだけれど、それはあまり考えないほうがいいのだと思う。なので、勉強やゲームに集中するようにした。
 そのまま夜になって、早めにベッドに入ったというわけだ。
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