ずっとあなたが好きでした。




「えっと……広瀬…広瀬潤です。今年、30になります。
趣味は…映画鑑賞です。」

まばらな拍手……
極めてつまらない自己紹介をしてしまった。
映画もそれほどこだわりがあるってわけじゃないけれど、他に趣味を思い付かなかったから、そう言ったまでのことだ。



宮本の言っていた通り、女性達はみんなけっこう可愛い子ばかりだった。
それだけで僕は嬉しくて、テンションは上がったものの、同時に緊張感も募り、いつも以上に喋れなくなっていた。



(リラックス、リラックス…
どうせ、僕はカップルになれるはずもないんだし、緊張するだけ馬鹿馬鹿しい。)



僕は、自分にそう言い聞かせた。
だけど、頭ではわかっていても、感情をコントロールするのは、なかなかに難しい。
宮本やその友達が、冗談を言ってはその場を沸かせるのを見ていると、僕はますます焦りのようなものを感じた。
だけど、口下手な僕にはあんな真似は出来ない。
僕には、ただ、作り笑いを浮かべることしか出来なかった。



やっぱり、こんな所、来るんじゃなかった。
この合コンが早く終わることを願いながら、僕はあまり好きではないビールを喉に流し込んだ。
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