ずっとあなたが好きでした。

「広瀬さん。」

振り向くと、そこには愛美さんが立っていた。
暖かそうなもこもこしたコートに、プリーツの入った長いスカート。
今日もとても素敵だ。



「あ…こ、こんにちは。」

「早かったんですね。」

「え？今、来たばかりですよ。」

「え？あ、そ、そうですね。」



愛美さんのどこか気まずい顔を見て気が付いた。
そうだ、愛美さんは待ち合わせの時間より早かったんですねって言ったんだ。
それなのに、僕がチグハグな返事をしてしまったから…



「あ、え、えっと…ちょっと早いけど、行きましょうか。」

「そうですね。」

僕は何もなかったかのような顔をしてそう言った。
そう言うしかなかったんだ。



「あ、良いお天気で良かったですね。」

「……そうですね。」



しまった！
また失言だ。
これから映画館に行くのに、お天気なんて関係ないのに。
きっと、呆れてるだろうな。
でも、言ってしまったことはもうどうにもならない。
くよくよ悩むのはやめよう。



（これから挽回すれば良いんだ。）



挽回出来る自信はなかったけれど、僕は無理やりそんなことを考えた。