ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
そんな私の姿を薄目で確認しながら、千秋さんが笑みをこぼした。
「喋ってよ。晴日ちゃんの声、可愛くて結構好きなんだ。なんか落ち着く。」
片腕で目を覆ったまま、さらりと自然に言ったセリフ。
思わず、ドキッとした。
――可愛くて、好き
無性に意識してしまい、耳が熱くなる。頭の中で反響する言葉のせいで、心臓の鼓動が無駄に激しくなっていった。
可愛いも綺麗も好きも、イケメンにとっては挨拶と同じこと。今だって、ただ声を褒められただけで深い意味はない。きっと、千秋さんからそういう類のことを初めて言われたもので、動揺しているだけなんだ。
必死に、そう自分に言い聞かせていた。
でも、意識すればするほど顔には熱がこもり、動揺がさらに増していく。
「え、そこで黙る?」
驚きのあまり黙り込んでしまった私に、笑いながら腕をどけて起き上がる彼。
「あ、じゃ、じゃあ!さっきの写真見ます?」
慌てて何か話さなくてはと考えた結果。顔を見られないようにと、携帯の画面を顔の前に突き出し、そう言っていた。
「ほら、これ。上でサッカーしてたとこ。よく撮れてるんですよ?あ、これとか。......あと、これとか!」
そして、画面を次々にスライドさせながら、強引に近づいていく。動揺を悟られないように、赤くなった顔に気づかれないようにと、必死で顔を伏せた。