ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
それもこれも全部、千秋さんのせい。
今まで突き放してばかりいて、たまの飴はあったけど、それでもこんなド直球な台詞は言われたことがなかった。それが突然気を許した猫みたいに、懐に入ってきたかと思えば、心をオープンにしてきて......
全部全部、千秋さんが悪いんだ。
1人で悶々としながら、無理矢理そう納得することにした。
「親子か。」
すると、急に声のトーンを落とし、寂しげな表情を浮かべる彼。熱くなっていた私の体からは、熱がスッと引いていった。
「千秋さん......?」
「親って、なんなんだろうな。」
そう言いながら取り繕う笑顔を見たら、こちらまで感情が伝染してくるようだった。
「なんか私、余計なこと......」
「違う違う、ごめん。あー、何言ってんだろ。疲れてんのかも。気にしないで。」
頭をかきながら、おもむろに立ち上がる。そして、体を伸ばしながら、またパソコンの方へと戻っていってしまった。
その後ろ姿が、妙に私を放っておけなくさせた。なんだか一瞬、また心を開こうとしてくれた気がしたから。
「千秋さん。」
「ん?」
「お酒、少しだけ付き合ってもらえませんか?」
そう言って、笑顔を向ける。私は、その開きかけていた心の扉に、少しだけ手を伸ばしてみたくなった。