ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
いつの間にか、ビールは2本目に突入していた。
「だから、親にはならない。そんな家で育ったやつ、ロクな親にならないだろうし。それであの人たちみたいになるくらいなら、子供なんて作らない方がいい。その方が子供のためだって、昔からずっと思ってきた。」
今日の千秋さんは、珍しく饒舌だった。
彼の心の闇が、どんどん溢れ出していく。でも、どうしても、それが人ごとのようには思えなかった。
「だから、千秋さんだったのかな。」
「ん?」
今まで見せなかった、憂いをひそめた表情。彼を見ていたら、思わずそんな言葉が飛び出していた。
「ずっと自分の中でも腑に落ちなくて。家を出た時、どうして真っ先にここへ来ようと思ったんだろうって。なんで疑いもせず、千秋さんを選んだんだろうって。」
最初は、今すぐに結婚してくれる人だったから。その言葉にすがるような思いで、ここへきたんだと思っていた。だけど、違う気がする。
私は、本能的に彼を選んでいたのかもしれない。
「私たち、似てるんだと思う。親に絶望して、愛に希望なんてなくて、一人ぼっちで。」
勝手に、通じ合った気がした。