ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「自分でも、驚いてます......」
そう言いながら、良い反応が見れてホッと胸を撫で下ろす。でも、もう少し早く反応してくれても良かったのではと、心の中でむくれていた。
「27年、親にも逆らえなかったのになー。勘当されて解き放たれると、こうも変わるか。」
「ちょっと。なんかトゲありません?」
私たちは顔を見合わせ、笑みを浮かべながら和やかな空気に包まれた。
いつから、こんな空気を作れるようになったのだろうか。初めて交わしたここでの会話を思い返せば、あの時の自分には考えられないこと。きっとこんな未来が待っているだなんて、信じなかっただろう。
まだ出会ってから、1ヶ月半しか経っていないなんて思えないこの空気感。なぜか彼といると落ち着くようになっていて、もう長いこと一緒にいる恋人のような感覚にさえ、陥りそうになる。
千秋さんは、不思議な人だった。
「あ、そういえば、明日ここへ行くことにしたんです。」
全て打ち明けられたことへの満足感か。そう言いながら、肩の力がスッと抜けた。
寝る直前まで見ていた、神谷さんからもらった日時の書かれた紙。ポケットに入れていたことを思い出すと、千秋さんの前に差し出した。
「詳しいことは何も知らなくて、ちょっと怖いんですけど。でも、向き合ってこいと言われて、勇気を出してみようと思ったんです。」
そう言った後、私は期待していた。
また、「凄い前進してるじゃん」とでも言って、笑い飛ばしてくれるのではないかと、彼からの言葉を待っていた。