ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
しかし、彼の反応は、また私の予想を反していた。何も言わずに立ち上がり、スッと私の後ろを通り過ぎていく。
「さてと。俺はそろそろ寝るかな。」
大きな欠伸をしながらグラスを片付け始め、深夜2時になった時計を見つめる。
「さすがにこれ以上飲んでたら、明日の仕事に響くし。俺ももう若くないな。」
冗談っぽく笑い、彼はなぜか.......
私の言葉を聞かなかったことにした――。
「千秋さん。」
なんとなく違和感を感じ、気づくと部屋へ戻ろうとする彼を引き止めていた。
さっきまで、ケラケラと笑いながら話してくれて、とても良い雰囲気だと思っていた。それなのに急に空気が変わってしまったようで、不自然だった。
「私、何か変なこと言っちゃいました?」
「いや?どうして?」
困惑しながらの問いかけに、彼は顔色一つ変えない。
一瞬、考えすぎかと思おうとしたけれど、最後に向けた笑顔が引きつっていたことに気づき、やはりそうは思えなかった。
しかし、私は何も言えなかった。黙り込み、彼の後ろ姿が遠のいていくのを見つめることしかできなかった。
その夜、私は一人不安に駆られていた。頭まですっぽりと被った布団の中で、悶々としながら眠りについた。