ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
『新薬を利用したリハビリテーションとその効果について』
ロビーに入ると、でかでかと立てかけられていた看板が真っ先に目に入った。それは、13時から行われるという製薬会社のセミナー。
今日は、ただここへ来るよう言われただけ。何をするかも、誰に会うのかも分からない。そんな私は、その看板を目にした瞬間、なぜか心がざわついた。
「瀬川晴日様、ですね?」
その時、フロントで突然声をかけられた。
黒のスーツを着たホテルマン。ビクッと反応しながら、恐る恐る頷くと、指先がスッと奥のエレベーターに向けられた。
「お待ちしておりました。神谷様から、ご案内するよう仰せつかっております。どうぞ、こちらへ。」
戸惑いながらも、私は言われるがままだった。彼の後ろをゆっくりとついて歩き、その場を移動する。
しばらくして、着いた先にあったものを見て思う。
目線を下に向けると、ロビーで見た看板とまったく同じものが目の前にある。そこは、あのセミナーの会場。私の予感は、見事的中していた。
受付には、1時間も前だというのに、ずらりと並ぶ人々。
ホテルマンの男性が、仕事を終えたようにお辞儀をして去っていくと、私はそこで1人取り残された。