ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
ひとまず受付を済ませ、中へ入る。目立たぬよう、ひっそりと1番後ろの席を確保した。
当たり前だけれど、どこを見ても医療関係者ばかりだった。挙動不審に辺りを見渡しながら、たまに見える知った顔にドキッとする。中には、父の付き合いで顔を合わせた方もいて、心が休まらなかった。
心なしか少し空気が重たく感じ、続々と席が埋まっていくたび、場違いな状況にソワソワとした。
「では、時間になりましたので、始めさせていただきます。」
ドキドキとしたまま、時間だけが過ぎ去り、あっという間に13時を迎える。司会者の声と共に、騒ついていた場内は一気にしんと静まり返った。
始まってしまった。
そんな気持ちになりながら、落ち着かずにいる。
どうして製薬会社のセミナーなんかに、私を参加させたのか。神谷さんの意図が分からないまま、半信半疑でいる。
しかし、私はその訳を、すぐに知ることとなった。
「この度、我が社、ウィステリア製薬が開発いたしました、新薬に関するセミナーにお集まりいただき、誠にありがとうございます。えー、まず、今回新薬の治験にご協力いただきました方々をご紹介致します。向かって左から――」