ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
第5章
_新しい地で
「いらっしゃいませー。」
私は今、『Capo(カーポ)』というイタリアンレストランでアルバイト生活を送っている。
あれから、千秋さんとは一度も連絡をとっていない。家を出た後、一度だけ着信があったけれど、それも無視してしまった。
携帯を見ながら、何度も通話ボタンに手を伸ばそうとはした。でも、勇気が出ず、気づいた時には切れていた。
すると、もう二度と携帯が鳴ることはなかった。
「すみませーん。」
ランチタイムも終わり、少し落ち着いてきた店内。ゆっくりテーブルを片付けながらボーッとしていると、呼ばれた声にハッとする。
「はい。お伺いいた......、って。ちょっと、また来たの?」
ハンディを手に向かうと、一気に気が抜けたような声が出た。
「初バイトは続いてるみたいだねー。」
そこには、いつものように派手な格好をした双葉が座っていた。
「はいはい、で?ご注文は?」
「えーっとですねー。」
そう言いながらまだ決まっていないようで、メニューを眺め始める彼女。相変わらずの自由人に呆れながら彼女を待つ中、ふと思い立ったように口を開く。
「あのさ、最近ずっと気になってたんだけど。」
「んー?」
「そのー、.......二人ってデートしてます?」
双葉からチラリと視線を変える私。
彼女の向かい側にはもう一人。
「いやー、その、ね。まだ全然!何もないよ?」
ニコニコと笑って反応する、零士さんが座っていた。