ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 私が働いているこのレストラン。実は、零士さんが紹介してくれた場所だった。

 千秋さんの家を出てから、何かと気にかけてくれていた彼。ずっと無職で、人生のどん底にいるかのように廃人と化していた私を見兼ね、突然このお店を紹介してくれた。

 彼の親戚がオーナーをやっている関係で、口をきいてくれると、ひとまず就職先が見つかるまででもいいと好条件で雇ってくれたのだった。


 そんな零士さんも双葉も、私の様子をよく気にかけてくれていて、何度もこのお店に足を運んでくれていた。

 始めは接点もなかった2人。お店には1人ずつ来て、鉢合わせることはなかったはず。


 しかし、いつからか急に一緒に来るようになっていて、私の知らぬところでいつの間にか知り合っていた。

 きっかけは、思わぬところに落ちているものだ。


「やだもー。零士さんったら、"まだ"なんてそんな直接的なー。」

 そんな中、零士さんの言葉に異常な反応を見せ、一人盛り上がっている双葉。久しぶりに女を出している彼女を見て、少しだけ小っ恥ずかしくなっていた。


 双葉は、礼央を産んでからまともな恋愛をしていない。

 子育てと仕事の両立に必死で、きっと自分の時間なんて持てなかったんだと思う。


 それが今はとても楽しそうで、何よりとは思いながらも、落ち着いた雰囲気の零士さんと騒がしい双葉の組み合わせ。

 なんだか異色の組み合わせに、二人を知っている私としては少し複雑な心境だった。

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