ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「そういえば、まだホテル暮らし続けてるの?」
「はい。やっと、バイトにも慣れてきたので、そろそろアパートでも探さなくちゃなーとは思うんですけど。なかなか腰が重くて。」
家を出てからは、安いビジネスホテルで暮らしている。
双葉は「うちにこい」と言ってくれたけれど、そこまで甘えるのは気が引けて、結局ホテル暮らしのまま。少し慣れてきてしまったこともあり、なかなか不動産探しには移れていなかった。
「瀬川さん、部屋探してたんすか?」
すると、突然会話に入ってきた男性の声。
「え?」
顔を上げると、隣には創くんが立っていて、お盆を持ったままこちらを見下ろしていた。
「あ、すみません。会話聞こえてきちゃって。」
無表情のまま、済んだお皿を片付けながらそう言う彼。
ポカンとしていると、それから何を言うわけでもなく、ペコッと頭を下げてお皿を下げていった。
私はなんだったんだろうと思っていると、隣ではイケメンスイッチが作動していた。
「えっ、誰?てか、かわいー。いけめーん。」
双葉は、興奮気味に私の袖をグイッと引っ張り、目をキラキラさせている。
内心、隣には零士さんがいるのに良いのかと思いながら、苦笑いを浮かべていた。