ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「独り言って。もしかして、テレビにも話しかけちゃうタイプっすか?」
「いや、さすがにテレビには――」
後ろから聞こえてきた声に反応し、自然とそう話し出しそうになる私。しかし、途中で気づき、ハッと後ろを振り返る。
そこには、大きな茶色いコートを羽織った、私服姿の創くんが立っていた。
「なんで?」
「自分もう上がりなんで、お疲れ様です。」
「ああ、そっか。おつかれ。」
全く気配に気づかなかった。胸に手を当てると、まだ心臓がドキドキとしている。
双葉の言う通り、創くんは今時男子の美青年。だけど、少し独特な雰囲気を放ち、掴めない子だった。
「びっくりしたー。」
ペコっと頭を下げて帰っていく後ろ姿に、私は小声でそう呟く。
私は携帯を手に、彼とは反対方向へと歩き出した。
「あっ、瀬川さん。」
すると、突然創くんの声に引き止められた。
「さっきの話、本気です?」
「え?」
「住むとこ探してるってやつ。」
振り向いたまま、よく分からずに固まった。目をパチクリとさせ、彼を見たまま思わず首を傾げていた。