ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「本当にいいの?」
「はい。まあ、この前まで自分が住んでた部屋なんで、もし気になるなら全然断ってくれちゃっていいんですけど。」
創くんに引き止められた後、私はお店から10分ほど歩いた先のマンションの一室に来ていた。
ここへ来る間、話を聞いた。
以前、ここは創くんのお婆さんが仕事場として利用していた場所だったとか。
数年前に亡くなられて以来、使われていなかったというこの部屋には、大学が近いということもあり、創くんが住むことになった。
でも、その創くんもキャンパスが変わり、今は実家へ。使っていないこの部屋は、売りに出そうか否か迷っていたそう。
そんなタイミングで、私が部屋を探しているという話を聞きつけ、貸してくれようとしていた。
「祖母が画家で、アトリエに使ってたところなんで、まだ絵とか残ってますけど。あとは寝室以外なんにもなくて、それでも良ければ。」
一応、見るだけでもと案内されたこのマンション。
オートロックもしっかりついた一階の部屋。間取りは1LDKと、想像したよりも広かった。
彼の言う通り、テーブルやソファはおろかリビングとされるスペースには何も置かれていない。
つい最近まで住んでいた彼も、本当に寝泊まりするだけの部屋に使っていたかのように、買い揃えられていたのは、寝室に置かれた家具だけ。閑散としていた。