ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「ハッキリ言うねー。」
お盆に乗せた麦茶を運びながら、私はあまりの動揺に、そう言って笑い飛ばすことしかできなかった。
上手く笑えない。でも、笑っていないと、蓋をしたはずの気持ちが溢れ出しそうで、耐えられなかった。
「ハタチの若造が生意気言って、って言われるかもしれないですけど。」
すると、座った途端、突然そんなことを言い出す彼。
「ちゃんと言葉にしなきゃ、人の気持ちなんて誰にも分からないんですよ。逃げてきたまま、知ろうともしないなんてもっての外。」
珍しく感情的に話し、私の前で見せたことのない表情に面食らっていた。
「偽装夫婦の真似事でも何でもしに行って、もう一度ちゃんと話し会ってくるべきだと、俺は思います。」
「創くん......」
いつも私の前では落ち着いていて、"自分は"なんて言っていた彼が、私の前で初めて"俺は"と言う。
その変化に驚きつつ、ハッキリと背中を押され、ふわっと肩の力が軽くなった気がした。
7つも年下なのに、私よりしっかりしていて、正直「参った」と言いたくなるくらい大人びている。
張り詰めていた気が抜け、素の部分を見せてくれた彼の変化に、喜びを覚える余裕ができた。
「なんすか?」
ジッと見つめていると、目が合った瞬間に怪訝な顔を向けられ、内心ドキッとさせられる私。
「ていうか、ハタチの若造がって、私たちそこまで年違わないと思うんだけど?」
「え?ああ。.....えっとー、すみません。」
そんな風に誤魔化しながら、焦る彼を見てクスッと笑う。