ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 きっと、昨日の夜のことが関係している。私が起きる前にと、気を遣って出て行ったに違いない。

 ぽっかりと心に穴が空いたように、気持ちは沈んでいた。


「晴日さん。」

 そんな中、立ち尽くしている私を前に、顔を覗き込んできた聖子さん。ハッとすると、そのままソファの方へと促された。


「私、あなたに謝らなくちゃ。」

 すると、思わぬ喋り出しに驚き、言葉が出なくなった。

「えっと.....」

「ごめんなさいね。昨日、あの部屋で2人が話してるのを、たまたま聞いてしまって。」


 あの部屋――。

 ふと、ゲストルームで話していた千秋さんとの会話を思い出し、サーッと血の気が引いていった。


「あの、いや、あれはその.....」

 明らかな動揺を見せ、怪しさしかない私の言動。

 そうと分かっていても、まだハッキリとは起きていないこの頭で、こんな不意打ちに対応できるはずもなく。無駄に手を動かしながら、ただただ慌てていた。


「あ、いいのよっ。違うの。」

 すると、なぜか聖子さんまで慌て出す。

 訳がわからずに固まってしまうと、優しい表情でニコッと私に微笑みかけてきた。

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