ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
――あなたのことが本当に大事なのね
――あなたと会う口実が欲しかったからじゃないかって
聖子さんに言われた言葉が、突然頭の中をグルグルと回り、感情がぐちゃぐちゃになる。
「だから――」
「千秋さんっ。」
気づくと、反射的に彼の言葉を遮り、耳元では戸惑ったような声が聞こえてきた。
私は、わずかに険しい表情を浮かべながら、唇をぎゅっと結ぶ。
「正直、何を信じたらいいか分からないんです。」
呼吸が震え、やっとの思いで出た言葉。
本当は、聞きたいことが山ほどある。
千秋さんを知れば知るほど、彼という人が分からなくなり、騙されていたと思っていたことも、心のどこかで違和感を感じていた。
でも、それ以上に私は、その何かを知るのが怖かった。
今以上に真実を知って、傷つくのが怖かった。
もし、私の知っている千秋さんが、全て偽りだったとしたら、もう誰のことも信じられなくなってしまう。
そんな気がして、勇気が出なかった。
「私の大事な人は、みんな私に嘘をつく。みんな、私に隠し事をする。みんな、みんな......」
「晴日ちゃん。」
お父さん、お母さん、矢島さん。一人一人の顔が浮かび、最後に千秋さんの顔がちらりとよぎる。