ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

「私、きっと二度目は耐えられない。二度も大事な人は、失いたくないんです。」


 訴えるようにそう言いながら、うっすらと涙ぐみ、目頭が熱くなった。

 電話口の向こうは静かになり、返ってくる言葉にドキドキしながら、私はそのまま黙り込んだ。


「今、どこにいる?」

「え?」

 すると、唐突な質問にそう声が漏れた。

「えっと、千秋さんの家のリビングに。合鍵を返さなくちゃと思って。」

 戸惑いながらそう答えると、うっすら浮かんでいた涙はスッと引っ込んでいた。

 なぜそんなことを言い出したのか。訳がわからず、携帯に耳をくっつけたまま、次の言葉を待った。


「自分の部屋、行ける?」

 そして、続く動揺。私はキョロキョロと辺りを見渡しながら、慌ててその場を立ち上がる。


「入って、どうするんですか?」

 部屋の前に立つと、私は半信半疑のまま、ゆっくりと足を踏み入れた。

 そこは、私があの日出て行った時のまま、何も変わっていない。タンスの引き出しが、少しだけ開いていた。


「千秋さん.....?」

「ベッドの上にさ、クッション山積みになってるじゃん。全部それどけてみて。」

「クッション?」

 疑問符を投げかけながら、言われるがままにベッドへのぼる。枕元に大量に置かれたクッションを見て、一つずつそれをどけていった。

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