ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 私は椅子の背に寄りかかり、静かに頷く。

 こんな相談にゴールはない。結局は、自分で一歩を踏み出さなくては、何も始まらない。

 創くんや双葉に話を聞いてもらううち、だんだんとそう自覚してきていた。


「あとはさ、晴日がどうしたいかなんじゃないの?」

 無意識に触っていた指輪。その感触を確かめながら、言葉が深く胸に突き刺さる。


「好きなんでしょ。本気で。」


 1日だけ夫婦に戻ったあの日から、自覚してしまった彼への思い。私は、もう後戻りが出来なくなっていた。

 言葉に詰まりながらも、また小さく頷く。


 私は今でも、千秋さんが好きだった――。


 その時、突然窓ガラスがコンコンと叩かれた。窓際の席に座っていた私たちは、真横で聞こえたその音に、揃って顔を向ける。

 すると、そこにあった顔に驚いた。


「ちょっと、どういうこと?」

 思わず双葉を見て言うと、照れたように微笑みながら、女の顔になる彼女。

 少し屈みながら、座っている私たちに目線を合わせる。そうしてニコッと微笑むのは、零士さんだった。


< 218 / 264 >

この作品をシェア

pagetop