ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
私は椅子の背に寄りかかり、静かに頷く。
こんな相談にゴールはない。結局は、自分で一歩を踏み出さなくては、何も始まらない。
創くんや双葉に話を聞いてもらううち、だんだんとそう自覚してきていた。
「あとはさ、晴日がどうしたいかなんじゃないの?」
無意識に触っていた指輪。その感触を確かめながら、言葉が深く胸に突き刺さる。
「好きなんでしょ。本気で。」
1日だけ夫婦に戻ったあの日から、自覚してしまった彼への思い。私は、もう後戻りが出来なくなっていた。
言葉に詰まりながらも、また小さく頷く。
私は今でも、千秋さんが好きだった――。
その時、突然窓ガラスがコンコンと叩かれた。窓際の席に座っていた私たちは、真横で聞こえたその音に、揃って顔を向ける。
すると、そこにあった顔に驚いた。
「ちょっと、どういうこと?」
思わず双葉を見て言うと、照れたように微笑みながら、女の顔になる彼女。
少し屈みながら、座っている私たちに目線を合わせる。そうしてニコッと微笑むのは、零士さんだった。