ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
_正体
その日の夜。
アルバイトを終えた私は、店の裏口から出てすぐに、物陰に身を隠した。
送ってくれると言っていた創くんには、事前にLINEで状況は伝えていた。けれど、何も考えず堂々と現れ、私は慌てて背後に引っ張り込んだ。
「んで、何で隠れてるんすか。」
「シッ!一緒にいるところ、見られたらまずいでしょ?」
壁に手をつき、恐る恐る顔を出しながら、裏口から帰って行くスタッフの姿を見届ける。
今日はなんといっても、胡桃ちゃんが出勤している日。
ただでさえ、他のみんなに見られても、何やら変な噂がたちかねない。それが、彼女に見られたとなると、もっとややこしいことになってしまうのが目に見えていた。
「送ってくれるのはありがたいけど、せめてみんなが帰ってから。」
私は細心の注意をはらい、出て行く人を見ながら指を折って数えていく。
創くんは、私がどれだけ胡桃ちゃんに睨まれているか、まるでわかっていないのだ。
「あれから、ちょっとは意識してくれました?」
「ん?なにが?」
「まじか。それはそれで傷つきます。」
裏口にばかり集中して、後ろから聞こえてきた声には無意識にそう答える。しかし、すぐにハッとして、慌てて後ろを振り返った。