ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「あ、いや、その.....。」
その瞬間、彼を見上げると、ちょっとした違和感に襲われる。
「なんか創くん、キャラ変わった?」
「え?」
「最初はもっとこう、落ち着いた感じじゃなかったっけ?」
店の電気が消え、オーナーが最後に鍵を閉めて帰っていくのを見た。ゆっくりと物陰から出ていく創くんは、私の問いを無視して、ため息をつく。
「え、なに?」
様子を伺いながらもう一度問いかけても、彼は呆れたような声を出し、スタスタと前を歩いていってしまった。
訳がわからず、私は首を捻る。
しかし、それから2人で歩いて帰る道のりでは、しばらく会話が生まれることはなかった。
大通りを抜けてしまうと、マンションまでの道は、街灯が灯るだけの少し暗い道を歩くようになる。夜遅くに歩くには、ものの数分ではあるものの、若干物騒な雰囲気を醸し出していた。
「瀬川さん、今の気づきました?」
すると、黙り込んでいたはずの創くんが、突然そう口を開く。
「うん。気づいた、かも。」
振り返らず、前を向いて歩いたまま、私は口だけを動かした。
私たちは、その人通りの少ない道のりで、少し前から背後で迫り来る人の気配を感じていた。
ずっと黙ったまま歩いていたからこそ、周りの気配には敏感で、歩幅を合わせたような足音と微かな物音が、風に乗って聞こえてきた。