ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「知ってるって、知り合いとか――」
一瞬、見え隠れする新たな候補者にドキドキしていると、慌てた胡桃ちゃんがぶんぶんと手を振った。
「ああ、違います違います!そうじゃなくて!もしかしたら、お店の前で見たかもしれないなー、って.....。」
自信なさげに、言葉は尻つぼみになっていく。
「その、1回だったらね?思い出さなかったと思うんですよ!でも、お店の方ジーッと見てるの、何回か見かけて。なんなら話しかけちゃって。中入りますか?って。」
「そしたら?」
「慌てて帰っちゃいました。」
本当に、胡桃ちゃんの言うその人が、私をつけていた人物なのだろうか。
疑心暗鬼になりながら、黙り込む。
片手では頭を抱え、片手ではビールジョッキに手を伸ばす。もう、頭が働かなかった。
「どんな奴?」
そんな私を見兼ねてか、やっと話に参加してきた創くん。胡桃ちゃんの方へと体を向けると、頬杖をついた。
「んー、いくつぐらいの人だろう。男の人で.....」
その瞬間ドキッとして、無意識のうちに動きが止まった。
そんなわけないと分かっているはずなのに、心のどこかで期待が膨らむ。1人の人物が頭に浮かんだ。
千秋さん――。
「でも、結構年配のおじさんでしたよ?」
しかし、その淡い期待はすぐに崩れ落ちた。