ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
顔に出したつもりはない。
けれど、勘の鋭い創くんと目が合い、なんだか見透かされているような気がした。
「一瞬、旦那かなって期待しました?」
「へっ?」
「顔に書いてありますよ。分かりやすすぎ。」
案の定、鋭い言葉が突き刺さる。裏返った声に顔が赤くなり、目を逸らした。
完全に、私の反応を楽しんでいる。
「てか、なんかなかったの?特徴とか。」
ふてくされて黙り込む私を無視して、パッと胡桃ちゃんに向きを変える創くん。腕を組みながら険しい顔をする彼女は、少しの間記憶を遡るように唸っていた。
「ああっ!!」
すると、すぐにそう声を上げ、パッと顔を明るくした。
「そういえば、1回だけ。ペット連れてきてました!」
凄いことを思い出したと、そう言わんばかりの顔。しかし、思っていたものとは、少し違った。
「ペ、ペット?」
顔をひきつらせながら、聞き返す私。
参考にならないと、一蹴する創くん。
「胡桃、ちっちゃい頃ワンちゃんに噛まれたことがあって。だから、うわぁーって思った記憶があるんですよね。しかも、真っ黒で怖そうなワンちゃんだったから、尚更で。」
そんな中、ヘラヘラと笑って誤魔化す彼女に、創くんはため息をついた。