ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

「それがなんだ。なぜ、アルバイトなんてすることになる。なぜ、こんなところに1人暮らしを。なぜ、お前が苦労することになる。」

 なぜ、なぜ、なぜ。答える隙も与えようとはせず、溢れ出す疑問を立て続けに並べる。

 そんな父を見ながら、私は驚きのあまり呆然としてしまった。


 気を紛らわせるように、湯呑みに手を伸ばす。意地だと言わんばかりに熱いお茶と格闘しながら、決まり悪そうに顔を背ける。

 そんな態度をとっていても、怒ったように見えていても、私には十分伝わってきた。今まで感じたことのない感覚。

 全て、愛情の裏返し。

 余計に胸が苦しくなった。


「藤澤さんと、何があった。」

 その時、声色が変わり、穏やかな口調へと変化する。

 しかし、突然出てきた彼の名前にドキッとさせられ、動揺は次から次へと押し寄せてきた。

「千秋さんとのこと、やっぱりご存知だったんですね。」

 私の想像でしかなかったことが、やっと確信に変わる。

 まだ家族には、誰にも伝えていなかった千秋さんの存在。その発言に瞬時に反応すると、父の肩が微かに揺れた。

 図星をついてしまったようで、返ってくる答えに身構えた。


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