ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「本当は、黙っていてほしいと言われていたんだがな。」
「え?」
「晴日は、良くも悪くも私に似ている。どこか頑固なところも。口下手なところも。......変に鋭いところもな。」
突然、何が始まったのか分からず、驚きのあまり思考が停止する。私のことをそんな風に言う父も珍しく、口が開いたまま凝視していた。
その時、父の口角が少しだけ緩んだのが見えた。
「だからお前が、あのセミナーに来ていたと知った時、もう黙ってはいられないと思った。きっと、何か勘づいてしまうからな。」
フラッシュバックするように、あの情景が写真となって思い出される。壇上にあがる千秋さんや治験に協力した病院長として紹介される父の姿。
私が、彼の正体や二人の関係を思い知った時だった。
「黙っていてほしいって....、どうして。」
出資のことを認めた父。そうと分かった今、千秋さんの真意が気になってしまう。なぜ、そんなことを言ったのか。
やっと頭が追いついて、そう疑問が生まれてきた。
「晴日のためだ。」
「私の?」
「お前のために、あの病院を残してやりたい。彼はそう言って、自ら出資を申し出てくれたんだ。」
その瞬間、頭が真っ白になった。
「でも、お前がもしそれを知ったら、傷つきかねない。また、出資を得るために利用されたと思ってしまうかもしれない。だから、自分の素性も知らない晴日には、落ち着くまで何も言わないで欲しいと頼まれていた。」