ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「落ち着いたら、4人で食事でもするか。」
相変わらず顔を背けたまま、だんまりを決め込んでいた父の口から突然出たセリフ。
「それに、あれはお前の家だ。いつでも帰ってくればいい。」
そして、扉を開けながらそう言い残す。そんな不器用な姿に微笑みながら、私は見えないところで頷いた。
心が、ほっこりと暖かくなった。
「食事は.....いつでもできるからな。」
「え?」
人生ではじめて、親子らしい会話ができた。そう感じながら密かに喜んで、エントランスまで見送っていた時。突然立ち止まる父が、ボソボソと呟いた。
どうしたのかと不思議に思いながら、私もつられて足を止める。
「もう、お前のことに口出すつもりはない。思うようにしなさい。それで、自分のことが落ち着いたら、顔を出せばいい。」
どこか一点を見つめながらそう言う父は、私の顔も見ずに歩き出す。静かにしていたサムとサニーが、ここぞとばかりに吠えるのを無理やり引っ張っていった。
自分のことが落ち着いたら――。
その意味が分からず、眉間にシワをよせながら父の背中を追う。自動ドアを通り、慌てて呼び止めようとした。