ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
ちらほらと、空から落ちてくる。
視界の端に微かに映り込む、白い結晶。
雪だ――。
「君に全てがバレた時、失うのが怖くなった。偽装結婚、愛のない結婚。彩に後ろめたくて、そんな外面ばかり気にしてたけど、そんなの意味なかった。そんなことしても、気持ちは変わらなかった。」
初めて聞く、千秋さんの想い。
彼と過ごした2人の思い出が、一気に蘇ってきた。
何をしたわけでもない。ろくに、デートもしなかった。毎日食事をしたり、お酒を飲んだり、たまにドライブをしただけ。
ただそれだけの記憶なのに、懐かしくて、愛おしいものに思えた。
「晴日ちゃん。」
すると、改まったように私を見て、咳払いをする彼。
パラパラと降り出す雪が、彼の髪に触れるように止まり、儚く消えていく。
ジッと見つめる瞳に、心臓が騒がしくなった。
「俺と、結婚してほしい。一生、そばにいてほしい。」
「千秋さん.....。」
「きっかけは、ここで見た君の姿だった。でも、きっと初めて会った時から惹かれてた。もう大事な人は失いたくないんだ。」
見つめ合う私たち。
プロポーズの言葉に胸がいっぱいになり、下唇を噛む。体を小刻みに震わせながら、目を瞑った。