ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「私、あんまり物欲なくて。欲しいものって言われても――」
「なんか思いつくものないの?」
「んー。」
思わず、唸るようにして出た声。
車が動き出すと、ぴんと張られたシートベルトに頭を預け、ボーッと外の景色を眺めた。
「あっ!」
その時、過ぎていくものを追いかけるように、体ごと目で追った。
「ん。なに?」
「欲しいもの!あー、ちょっと行きたいところがあるんですけど、いいですか?」
思いついたように言うと、戸惑う表情を見せる彼。
良いものを思いついた。
私は、口元が緩むのを堪えながら、内心は笑みを浮かべていた。
「それでー、なんで花屋?」
「何言ってるんですか!ここ、日本一品種の多いお花屋さんって有名なんですよ?」
そうして連れてきてもらった場所。それは、最近都内にできた大型フラワーショップ。
店内を練り歩きながら、花や展示されている写真、共に販売されている種を食い入るように見る。
少し納得いかない様子で、暇そうな彼。腕を組みながら仕方なくついてくる彼が背後に立つのをちらりと見ながら、私は思わず笑みを浮かべる。