ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

「まったく記憶にはないんですけど.....。」

 私は、ひとまずコーヒーを飲んで気持ちを落ち着かせながら、そう切り出す。


「昨日の私がそんな話をしたんだとして、あなたの目的を教えてください。」

 そして、今は一度、この話を受け入れてみることにした。

「さっき、お互いの目的って言いましたよね?利害の一致?それなら、私と結婚することであなたにもメリットがあるんでしょ?なんなんですか?」


 営業なんてしたことないけれど、なんだか気分は商談の場。相手が自信満々に正論をつきつけてきたおかげで、なぜかこちらも負けてはいられないという気にさせられた。


「フッ...」

 緊張感も束の間。私の顔を見て、なぜか吹き出すように笑う彼。前のめりだった体から力が抜けたように、ゆったりソファの背にもたれかかった。

「結婚の話してるって言うのに、色気のない会話。」

「ちょっ、それはそっちが先に!」


「強いて言うなら、愛のない結婚かな。」


 すると、急に空気が変わった。笑っていた顔からはスッと表情が抜け、私を見つめながら真顔で言った。

「この年になるとさ。親は結婚結婚うるさくて、今までいろんな子紹介されてきた。けど、たいして知りもしないのに好きだって言ってきたり、愛だの恋だの求めてきたり、うんざりなんだよね。」

 恋愛なんて諦めたと言わんばかりに、希望も何もないような目をして、瞳の奥は真っ暗。彼の表情からは、闇さえ感じた。

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