ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「晴日ちゃん、お願いよ。お父さんに謝って。今ならまだ間に合うわ。引き返して。」
ガラガラとトランクを引きながら、廊下を歩く私。それを後ろから追いかけてくる母。
しかし、私は構わず玄関で靴を履いた。そして、大きく息をはいて振り返る。
「お母さんは最後まで、私の味方じゃなかったね。」
私にとっては、最後の希望だった。
小さい頃から桜しか見ていなかったお母さんも、私にだって同じ愛情を持っているんだと、思いたかった。でも、どれだけお父さんからひどい言われ方をしても、一度だって割って入ってくれることはなかった。
もう、ここにいる意味は無い――
この日、私は27年間いた瀬川家と縁を切った。