ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「予想以上に早かったね。」
「お邪魔します。」
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家を出てすぐ、地図を頼りに今朝でてきたマンションを目指した。南高嶺にある高級マンション。だけど、辿り着いたところでどの部屋にいたかまでは分からず、息詰まる。
大きなトランクの隣でうずくまりながら、マンションへ入っていく人からは不審な目で見られた。行き場をなくした私は、友人に連絡しようとLINEを開く。
その時、"新しい友達"の欄に、見たこともない名前を見つけた。
『Chiaki』
一瞬、誰だか分からなかった。けれど、なんとなくあの人だと思った。そんな気がした。通話ボタンを押す前に一度躊躇しながら、思い切って押してみる。
「もしもし?」
すると、出たのはやはり聞き覚えのある声だった。
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「はい、どうぞ。」
情けないけれど、私にはここしか行くあてはなかった。
ばつが悪い思いをしながら、リビングのソファで紅茶をもらう。それは、今朝と同じ光景。
「言った通り、戻ってきたな。」
足を組んで大人の余裕を見せる彼に、私は苦笑いを浮かべた。何があったかは聞いてこない。ただ、静かに紅茶を飲んでいた。