ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
第2章
_俺のことも頼ればいい
「行ってらっしゃい。」
「寝てていいって言ったのに。籍はいれたけど、俺らは....」
「偽装結婚だって言うんですよね。でも、いいんです。私がしたくてしてるの。」
瀬川の家を出て、1ヶ月が経った。気温もだんだんと高くなり、緑に色づく草木。梅雨を迎えようとしていた。
「んー、じゃあ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
仕事に向かおうとする、スーツ姿の千秋さん。諦めたように、渋々そう言って出かけていく彼の背中に、大きく手を振った。
そこから、私の1日が始まる。
これは偽装結婚。そういう固定概念が強すぎて、彼は必要以上に尽くそうとする私を叱る。見送りも、そのうちの一つだった。
でも、それくらいさせてほしい。ただでさえ、暇なのだから.....
私は今、無職。
父の病院で働いていた私は、勘当されると同時に、当たり前のように仕事も失った。
彼が仕事に行ってしまうと、夜まで一人ぼっちになる。家にいる間、最初のうちは掃除をしたりしていたけど、やることをなくしてボーッとするようになった。
扉が閉まり、しんと静まり返る廊下でため息をつく。また今日も一人。
退屈気味に自分の部屋へと入り、ベッドにダイブした。そこは、元々空き部屋だった場所。愛用していたベッドもクッションもないけれど、新たに家具を買い揃えてくれた千秋さんのおかげで、素敵な部屋になった。