ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 ――タララン、タララン

 記憶の中に浸っていると、遠くから聞こえてきた音。ベッドに横たわっていた私は、聞き慣れない音に飛び起きた。

「このチャイムの音、まだ慣れない。」

 独り言を言いながら、リビングのインターホンへと急ぐ。画面を見ると、立っていたのは配達員の格好をした男性だった。


「お届け物でーす。」

 届いた荷物は、大きな段ボール。

 なぜか宛先は、私の名前になっていた。


「私、何か頼んだっけ。」

 ひとまず、リビングに持ち込んだ荷物を前にそう呟く。机の上に置き、開けようとすると、ふと差出人の名前に目が止まった。

「千秋さん??」

 思わぬ相手からの贈り物だった。


「すごく綺麗.....」

 中から出てきたのは、シャンパンゴールドのロングドレス。広げてみると、いかにも高そうな総レースの刺繍が施されていた。

 ドレスをそっと持ち上げ、姿見の前で自分に当ててみた。こんな素敵なドレス、着たことがない。


 その時、電話が鳴った。画面には、タイミング良く千秋さんの名前が表示されており、慌てて手にとる。

「はいっ、もしもし。」

「ああ、ごめんね。今日、晴日ちゃん宛てに荷物が届くからって、朝言うの忘れてて。」

 その瞬間、携帯を耳に当てながら、持っていたドレスに視線を落とす。荷物とは、やはりこれのことだろうか。

< 55 / 264 >

この作品をシェア

pagetop