ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「あ、初めまして。晴日と申します。......お母様が、あの世界的ピアニストの藤澤 聖子さんだとは存じ上げず。お目にかかれて光栄です。」
準備せず、慌てて言ったわりには、スラスラと言葉に出来ていた。自分で、自分を褒めてあげたい。
「まあ、光栄だなんて嬉しい。ありがとう。品があって美しくて、素晴らしいお嬢さんね。」
「ああ、そうだな。」
ご両親こそ品のある方々。
藤澤 聖子は、たしか世に出てきた頃にはすでに結婚していて、相手もピアニストだとか。そうなると、千秋さんのご両親は、そろって音楽家ということになる。
気品あふれるその家族構成には、足がすくむ思いだった。
「なるほどねー。いくら千秋に女性を紹介しても、なびかないはずだわ。こんなに綺麗な方を求めてたんですから。」
ひとまず、気に入ってはもらえたようだ。
私は反応に困りながら、必死に笑顔を作って受け流していた。
「聖子。それを、彼女の前では。」
「まあ、ごめんなさい。私ったら。」
なんだか変な気分だ。テレビの中でしか見たことのなかった有名人と、今目の前で話している。不思議な体験。