ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「はぁ....、緊張した。」
駐車場に戻り、車に乗り込んだ瞬間。私は解放されたように足を伸ばした。
「そ?上手くやってたと思うけど。」
「でも、本当に良かったんですか??あんなにあっさり帰ってきちゃって。」
中にいたのは、ほんの20分ほどだった。
並んでいた食事には手をつけることもなく、ご両親がいなくなると黙って歩き出した千秋さん。慌てて後を追うと、そのまま車へと一直線だった。
「いいんだよ、あれで充分。」
そう言って、シートベルトをする彼。私も慌てて手を伸ばすものの、着ていたドレスには申し訳なさを感じていた。
もっと着てあげたかった。これから先、この子を着てあげる場はないかもしれない。そう思うと、ずっとタンスの奥にしまわれたままなんて、悲しくなってしまう。
「でも、せっかく行ったのに......」
「あの人たちは、仕事がある時にしか日本に帰ってこないんだ。だから、ここに連れてくるしかなかっただけで、他に用はないから。」
あの人たち――
その言葉には、ピクリと反応した。さっきまで抱擁を交わしていたかと思ったら、今度は冷めた表情。その変わり様は、到底同じ人物とは思えなかった。