ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
私たちは、奥の1番良い席に通された。
水族館のような――大きな水槽が並ぶ店内。他からは少しだけ孤立した、綺麗な夜景の見える席だった。
「あの、どうして......」
席に座り、私は感動する間もなくそう聞いていた。景色を見るよりも何よりも、この状況を理解する方が先だった。
すると、彼に優しく微笑みかけられ、不意打ちの表情にドキッとする。
「今日のお礼。」
「え?」
「こっちの頼み聞いてくれたから。あの人たちの前で、頑張ってくれたお礼。」
予想外の言葉に、体の力がスッと抜けた気がした。
ただ、ご両親に少し挨拶をしただけ。それは、私にとって、そんな大層なことではない。
それなのに、見るからにこんな高そうなお店で、ご褒美。あまりのことに、驚いた。
「別に、あのくらいのこと全然......」
「それは、普通の夫婦だったら。でも、俺らは違うから、こういうのはちゃんとしたい。」
冷たくて、感じが悪くて、ずっとどこか掴めない存在だった。
それなのに、こうして時折見せる優しさが、私を不思議な気持ちにさせる。