ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「ここは、特別な日に来るんだ。仕事がうまくいった時とか、何かいいことがあった時。まあ、この席はカップルでないと来れないから......」
注がれたワイン。次々に運ばれてくるフランス料理。そして、最初は見る余裕のなかった綺麗な夜景。何をとっても感動的。
話しかけてくる彼の声も耳に届かず、食事に夢中になっていた。
「フッ。」
すると、吹き出すように笑われ、思わず顔を上げる。食事の手を止め、笑われた理由が分からずに、怪訝な顔を見せた。
「いや、ごめん。あんまり嬉しそうに食べてるから。俺の話も聞いてなかったでしょ。」
「んっ?ごめんなさい、なんですか?」
怪訝な表情はスッと消えた。真顔に戻り、慌てて水を飲む。話しかけられていたことを今知って、急に恥ずかしくなってきた。
「やっぱり、あんなとこで適当に食べてこなくて正解だったじゃん。」
そんな私の顔をまじまじと見て、満足げな彼。
その言葉で、脳裏に浮かんだのはパーティーの食事。
私たちがさっさと帰ってきたのは、このため。今更腑に落ち、急に点と点がつながったようだった。
恥ずかしながらコクリと頷く私は、心の中で思う。
そういうこと、する人だったんだ――と。