ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
第3章
_偽装結婚って?
「明るいうちから飲んでていいの?」
「やることないんですもん。お店開いてたし。」
「準備中って文字、見えなかったか?」
パーティーから数日が経ち、私は零士さんのお店に来ていた。それは、まだ夕方4時のこと。
「そろそろ仕事探さなくちゃなー。」
ぶつぶつとそう言いながら、お酒のグラスを手にため息をつく。
結婚してからフリーターを極めている私は、バーカウンターに突っ伏し、愚痴をこぼしていた。
キャンドルも、いつものクラシック音楽もない、開店前の店内。零士さんが片付けるグラスがカチャカチャと音を立てるだけで、しんと静まり返っている。
「千秋とは?うまいことやってる?」
「はい。あー、でも、いまだに謎だらけで。なんの仕事してるかも教えてくれないんですよ??秘密主義というか、なんというか。」
私はおもむろに起き上がり、ハハッと無理やり笑顔を作る。
頬杖をつきながら、お酒の入ったグラスを回し、カラカラと氷の音を聞いた。それは、心地のいい音だった。
「聞かないんだ。千秋が何してるか。」
ボーッとしていると、突然そう言った零士さん。
「俺が知ってるって分かってるはずなのに、晴日ちゃん聞いてこようとしないから。」
思わず顔を上げると、カウンターの中から身を乗り出すように両腕をついて、こちらを見ていた。