ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「結婚してから1ヶ月かー。意外と早いな。」
開店前にも関わらず、私たちは優雅にお酒を飲み続ける。そうして、しばらくカウンター越しに話をしていた。
「最初、千秋が手出したのかと思って冷や冷やしたからなー。酔い潰れた晴日ちゃん送ってったかと思ったら、1週間後に結婚しますって。」
「たしか零士さん、あの時動揺しすぎてグラス割ったでしょ?」
婚姻届を持って双葉に会いに行ったその足で、私たちはここへ来た。事前に説明もせず、アポ無しで押しかけ、そのおかげで零士さんはとびっきり驚いていた。
そんなあの日の出来事を思い出しながら、私はケラケラと笑う。
「あ、そういえば。この前、千秋さんのお母さんに会ったんです。聖子さん。」
「へぇ。」
「やっと理解できましたよ。南高嶺のタワマンに、1人で住んでる理由。生まれながらのセレブだったんですねー。」
私は1人で納得したように頷きながら、お酒が進む。
でも、零士さんは少し違う。反応しずらそうな顔をして、苦笑いを浮かべていた。
「......ああ、そうだね。」
そして、なぜか変な間があく。