ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 座ったまま、だんだんと呼吸が浅くなっていく。

 彼と会ったのは、結婚式以来のことだった。病院内でも避け続け、会わないようにと注意してきた。それなのに......

 いるはずのない矢島さんが、目の前にいる。その現実が受け入れられず、口がぽかんと開いた。


「何回電話しても繋がらないから。ここに来れば何かわかるかと思って、きてみたんだけど......」

 頭を抱え、放心状態のまま、こちらにゆっくりと向かってくる。

 私はピクリとも動けず、振り返ったまま固まっていた。


「とりあえず、一杯水もらえます?」

「え、あ、ああ。」

 私の目の前を通り過ぎ、すぐ横でカウンターにもたれかかる彼は、零士さんの方へ手を伸ばした。


「私、話した覚えないのに......」

 コップ一杯の水を一気に飲み干す彼。私は、その横でようやく口を開くことができた。

「前に見たんだ。たまたま、この店に入ってくところ。」

「え?」

 驚いて、途端に声が漏れる。

 気づくと、矢島さんの顔をじっと見上げていた。こんな近くで見たのはいつぶりだろうか。

 ハッとして、すぐに目を逸らした。

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