ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「そういえば、あの時の答え聞いてなかったね。桜と結婚するって、いつから知ってたのか。」
私のそう言ってにっこりと作った笑顔は、だんだんと冷めたように真顔へと戻っていく。
ただ、答えが知りたい。
ただ、本当のことが知りたい。
彼が"ちゃんと付き合っていた"のはいつまでだったのか。知りたいことはそれだけだった。
矢島さんは大きく息を吐き、うな垂れるように自分の足に体重を預けた。しばらく考えたように俯いたままでいると、観念したように体を起こす。
「結婚式の3ヶ月前。お義父さんから呼び出された。」
私は、やっと聞くことができた答えに力が抜けると、細かく頷いて覚悟を決めた。
それは、全てを聞く覚悟。
「家に呼ばれたから、てっきり晴日との結婚話だと思ってたんだ。でも、違って、病院の将来の話をされた。」
「将来?」
「今、うちは赤字経営が続いてて、廃業寸前のところにいるって話。」
経理部門で働き、父の側で経営も学んでいた私は、ある程度の状況は理解しているつもりだった。
でも、どうしてそれを矢島さんに、わざわざ呼び出してまで言ったのかが分からない。あまりにも意外な父の行動を、すぐには理解出来なかった。